近年に無い寒さが日本列島を襲っていると聞くけれど、やはり日本人は日本の「お正月」を愛しているのだ。
そして、ハワイに住んでいる僕も、あのヒンヤリとして凛とするような元旦の街の静けさが大好きだ。
Tシャツに短パンという、まったく初詣に相応しくない格好でダウンタウンにある出雲大社さんで御詣りした後は、日本時間から2日遅れの「紅白歌合戦」を見た。
予備知識が無く、「もしかして日本の正月番組チックなものをやってるかも」、と日本語チャンネルをつけたら、やっていたのだった。
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日本に居る時には全く見ようともしない番組なのですが、やはり心の底では「日本の年末年始な感じ」を欲していたのかも知れない。
その番組では、ボーイズバンドの面々とよく分からない演出に溢れていて、信じられないくらいヘタクソな女性司会者が仕切っていた。
そして、元アイドルのベテラン歌手は大トリのパフォーマンスで音を外してしまっていた。
いや、別にジャニーズとか、女優の吉高由里子さんとか松田聖子さんをディスるつもりは全く無い。
嵐はチームプレイでそつなく司会をしていた。
櫻井君の安定感は半端ない。
吉高さんは女優としての実力はすごく高い人だと思う。
そして聖子ちゃんの歌は「裸足の季節」から好きだし「蒼いフォトグラフ」は聞くだけで胸がキュンとなってしまうくらいのファンなのだ。
それでも、僕個人としては「紅白歌合戦」は「なんじゃ、この番組は!」というような感じだった。
年末のお酒が入って、鍋を食べて、もう蕎麦食えないよ、みたいな満腹感の中でただテレビをつけているだけ、という伝統的な鑑賞の仕方をしないで、結構じっくり見てしまったのがいけなかったのだろうか?
演出は古いし、パフォーマンスで圧倒するような歌手は長渕剛とNYから中継だった神田沙也加とイディナ・メンゼルだけだった。
特にNYからの二人はプロとして完璧な歌いっぷりだった。
観ながら混乱したのは、一体誰をターゲットにしているのか分からない、ということだった。
明らかに「紅白歌合戦」は今はほとんど幻想となってしまった「お茶の間」を視聴者に想定している。
オジイちゃんオバアちゃんから、日頃はウチに居ないお父さんから孫までが一緒に観ているはず、という前提で演出しているのだろう。
ただ、今の70歳代のオジイちゃんオバアちゃんは若い頃にエルビスプレスリーやビートルズやストーンズに熱狂した人達だ。そういう人達はきっと本気で紅白の演出を良しとしているとは思えない。
「まぁ、紅白はこういうもんだよ。昔から」という感じなんだろう。
AKBも頑張ってパフォーマンスしていたけれど、コアのファンはいつものライブの方のほうが盛り上がるだろう。
サザンもそうだ。横浜アリーナからの中継がサプライズで入った、ということだが、本当のファンは横浜にいるし、WOWOWで中継を観ている。
それなのに、サザンが「紅白に出る」!」というニュースバリューが誰に向けてのものなのか全然分からない。
海外で普段日本の番組を見てない、というシチュエーションでこの番組を見てみると恐ろしくレベルの低いエンタメに見えてしまう。
海外の人は、ジャニーズをほとんど知らないし、ヘタクソな司会をしている女性が実は注目の新鋭女優だということを知らない。
低い声で愛の讃歌を歌った男性か女性か分からない歌手が日本では有名なご意見番だということを知らない。
色々思った事を書いてしまったが、日本でよくテレビを観ている層が楽しめる演出になっているのだ。
というか、NHKは番組単体で成立するような演出の文脈を持っていないか、あえて放棄したのだろう。
そしてそれが「紅白」として当たり前に受け入れられて視聴率40%越えという結果になっているのだろう。
それはそれで良し、と考えるべきなのかもしれないが、僕は多分もう二度と「紅白歌合戦」を観ないだろう。
確実に自分が「ターゲット」とされていない事を再認識したからだが、僕がNHKの制作サイドにいたらジレンマに陥ってしまうだろう。
圧倒的に歌で勝負出来る歌手を集めて、日本はジャニーズとAKBだけではないことを証明したりしたくなるかもしれない。
そういう事を書くと、「いやいや、あれは日本人が観て、はぁ、年末だな、と思えればいいんだよ」「あれは、一種の忘年会なんだよ。細川たかしもビール持って歌っていたじゃないか」
と言われてしまうかも知れない。
そもそも、オジイちゃんから赤ちゃんまでが勢揃いしている「お茶の間」でそれぞれが違う歌手を楽しめればいい、というのが紅白のコンセプトなんだから、その通りだ。
それでも、「日本人なら、なぜこの演出で、このキャスティング」なのかわかるはず、というのは制作サイドの甘えだと僕は考える。
そして、多くの視聴者も、そういう NHKに甘いのだ。
日本の名だたるアーティストが大晦日に勢揃いして歌で人々を魅了する、には程遠い演出とパフォーマンスに思えてならないからだ。
緊張しまくったベテランである松田聖子に、脇で声援を送るこれまたベテランの和田アキ子の姿が映った。
松田聖子が神田沙也加の歌を中継で観てた時に涙ぐんだ姿には、僕もぐっときてしまったが、
最後の場面では日本的なのかもしれないが、アッコさんも聖子ちゃんもプロっぽくないと思ってしまった。
なんで年始早々、こんなことを考えたのだろうかと思ったら、それはアメリカで’Fresh off the boat’フレッシュ・オフ・ザ・ボートというアジア系が主人公のシチュエーションコメディが始まる事と頭の中でリンクしていることに気が付いた。
長いので、次回に続きます。
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