僕が尊敬して止まない先輩が経営する会社が運営しているということで、その存在を知った。
そのテーマは「和」だ。
くわしくはこちらにリンクを貼っておこう。
色んなイベントがあるようで、その中でも僕の目を引いたのは
「日本の夏、日本の恋」
というキャッチがついた「浴衣イベント」だった。
これのリンクはこっち。。
大きなお世話だが、このキャッチコピーが「日本の恋」だけだったら、全く意味不明だったろう。
この言葉の前に今までキンチョーが独占していた「日本の夏」をバシッとくっつけることで、俄然コピーとしての情緒が高まっているのだ。
夏、浴衣、和なビアガーデン、そしてほろ酔い気分。
そして、かすかな恋の予感。
まさにニッポンだ。
ニッポンの夏だ。
ニッポンの花火だ。
控えめなのに、情熱を奥底に秘めたニッポン情緒にあふれたひと夏への思いが伝わって来る。
まるで肌の露出が少ないのに色気漂う浴衣の女性のようだ。
夏のフロリダのビーチで、セクシーな女子大生達が薄いTシャツに水をかけられて「ヒーハー」「ヒャッホイ」と繰り広げられるウェットTシャツコンテスト。。
みたいなアグレッシブさからはまるで遠い。
濡れて透けた胸元を大胆に見せびらかすウェットTシャツ vs. 胸元のあわせをスッと直すしぐさが小粋な浴衣。
僕の好みは、もちろん・・・。両方だ。
そして、花火は夏の恋のメタファーだ。
儚く散る運命にあるけれど、パッと真夏の夜空にひと夏の夢を描くのだ。
きっとその恋は、成就することがあってはならない。
一瞬の幻であって欲しいのだ。
桑田圭祐が歌う夏の恋の歌も大抵「ひと夏」で終わっている。
厳しい冬をとても越えられないような、短命かつ儚く脆く、そして情熱的なものであって欲しいのだ。
だからこそ、切なく、記憶に残り、また巡って来る夏への想いが募ってくるのだ。
ところが、歳を重ね、いつしか、ひと夏の恋は、遠い過去のイベントとなる。
そして思うのだ。
「あの頃は良かった」と。
この「日本の夏、日本の恋」そして「夜空ノ庭」というひと夏のイベントを聞いた時、僕が思い出したのはひとつの秀逸なコピーだった。
「恋は、遠い日の花火ではない。」
Credit: サントリー オールド広告ライブラリー |
サントリーオールドの20年も前のCMの名コピーだ。
小野田隆雄氏という広告界の大御所であり希代の名コピーライターのコピー。
告白すると、当時20代前半だった僕には全くもって意味の分からない物だった。
このコピーは当時もかなり話題になった。
支持したのは、当時50代手前の団塊の世代の人達だったと思う。
彼らが商品のターゲットでもあった。
CM自体も、中年の星、長塚京三さんが出演し、20代の女性から想いを寄せられる設定だった。
さっき、僕には意味が分からなかった、と書いた。
正直に言おう。
「中年のオッサンの夢と幻想」を描いた下らないコピーだと実は感じていたのだった。
若いオネエちゃんから想いを寄せられる中年なんて、幻想以外なんでもないじゃないか!
くたびれたオッサンならオッサンらしく、今の現実を生きてくれ。
いつまでも若いつもりでいながら、俺たち20代の前でオールドを飲みながら説教、自慢話をしないでくれ、とか思っていたのだ。
ところが、自分も50代まであと数年という所まで来て、20年以上も前に見たこの広告のコピーを思い出してしまったのだ。
そしていかに素晴らしい名コピーだったのかやっと理解することが出来たのだった。
40代から50代というのは世間的にはミドルエージクライシス、中年の危機に陥るお年頃だ。
全然若くもないが、リタイヤするほどジイさん、バアさんにもなってない。
かと言って、やみくもに自分の夢や可能性だけを信じて突っ走るのは現実に抱えている物が多過ぎる。
そして、今や自分が何者であるか。
もっと言えば何者でも「無い」というリアリティに気付いてしまった年齢でもある。
それでも、毎日を生きなくてはならない。
せっかく生きるのならポジティブに生きたほうが断然いい。
そういう時に「恋は、遠い日の花火ではない。」は響きまくる。
若き日々に感じたパッションは、決して遠い過去の物ではない。
今、もう一度燃え上がらせることが出来るものなんだ。
そうこのコピーは教えてくれている。
自分の中に、もう一度感じるかすかな灯火。
そのかすかな灯火が、あなたの情熱の炎を再燃させるのかも知れない。
その気配を少しでも感じてみよう。
自分の中の情熱を。
花火のような情熱を。
若かりし日々に一度でも自分の中に「花火」を見たことがあるのなら、ミドルエイジになって見る「花火」の性質はきっとあの頃と違う物だろう。
それが、仮に幻想めいたものであっても、それがどうした!
自分が「何者でも無い」なんて本当か?
あなたは、30年、40年、50年生きて来た自分自身のストーリーを持っているはずだ。
そっちが本当のリアリティだ。
「オレは、ワタシは、他の誰でも無い、自分自身なんだ!
自分の中には、まだ情熱の炎が燃えている」と気付くのは素敵なことだ。
そして、満足げに冷えたビールで喉を潤すのは至福の時間だ。
とここまで書いて、サイトを見てみたら、このビアガーデン、ビールの提供は何とサッポロビールだった!
とういうか、ほとんどサントリーの回し者みたくなってしまった。
サッポロさん、すみません!(汗)
ここはフェアに、サッポロの名コピーで終わりにするとしよう。
そうです、この夏「男は黙ってサッポロビール!」
皆様、よい夏をお過ごし下さい!
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